点火を強化するには

2011-09-12

 
 良い火花は「エンジンの三要素」の一つで、燃費の低減や高効率化、出力の向上に重要で必要不可欠な要素です。


 その火花のエネルギーを作り出す大きな役割を果たすのがイグニッションコイル(点火コイル)です。


 イグニッションコイル(点火コイル)は、磁性体のコアに一次側と二次側の二つのコイルが巻いてあります。一次側のコイルに一定時間(ドエルタイム)電流を流すと磁界が生じ、コアにエネルギーが蓄えられます。 そして、それまで流していた一次電流を遮断すると磁界が消滅し、その消滅を妨げるように二次側コイルに起電力が発生します。この高電圧を利用して点火プラグに放電して点火を行います。

 コイルの種類は、ポイント式でコイルが別体(ディストリビューターのあるタイプ)、コイルとパワートランジスタ(イグナイター)が別々にあるもの(Z32 R32など)、コイルにイグナイターが内蔵されているもの(1990年代後半から現在のほとんど)に分かれますが、基本は全く同じです。

 通常、点火コイルは一次側の片方に電圧(バッテリーからの12V) がかかっています。イグナイターがオンになった瞬間に、一次側の反対側の端子がイグナイターを通してアースされることによってコイルが通電されます。 この通電されている時間をドエルタイムと呼び、純正の点火コイルで2~3mS(0.002~0.003秒)ほどです。 この電流のオンオフは、ECUからの信号によってイグナイターが行います。

点火コイル入力信号と出力波形
点火コイル信号
青:イグナイター入力 黄:点火出力(2000:1プローブで点火プラグ使用)
イグナイター入力が"L"になってから約4uSで出力電圧が立ち上がり、約11uSで放電している


 イグナイターの特性としては、この一次電流の切れ味も重要で、素早く切れるほどイグニッションコイルから発生する点火出力が大きくなります。(以前のポイント式では、低回転でも素早く切るための様々な工夫がありました)

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 コイルは長い電線が巻いてあるだけなので、テスターなどで計ると1Ω以下から数Ωの抵抗値です。 コイルの性質は、電圧をかけて電流を流そうとすると電流を流さない(変化させない)ように反発します。 この反発を押し切った分がエネルギーとしてコイルに貯められることになります。 ですのでテスターで計ったら1Ωだからと言って、 12Vかけたら12Aの電流が流れるというものではありません。 

 このようにイグニッションコイルはエネルギーを貯めることができ、そのエネルギーを蓄える能力はコイルの持つインダクタンスで決まります。インダクタンスは、コイルの巻き数や太さ、コアの種類、サイズ、形状など、点火コイルの種類(性能)によって変わります。 イグニッションコイルに多くのエネルギーを貯めるには、「電流を増やす」、「ドエルタイムを増やす」などの方法があります。しかし、コイルは貯められるエネルギーの量が決まっています。

  イグニッションコイルが通電された状態になると、コイルの反発を押し切って流れる電流が増えていきます。 これにより、時間と共にコイルに蓄えられるエネルギー(磁束密度)も上昇します。しかしコイルの構造(コアの材質や大きさ、形状など)による許容量(最大磁束密度)を超えると磁気飽和という状態になります。



 coil_saturation.png
(ドエルは一つの例)


 コイルが磁気飽和の状態になるとインダクタンスが消滅し、コイルは「ただの銅線」と同等になり、電線をショートさせたのと同じく大電流が流れます。 この状態になると継続して電流を流してもエネルギーは蓄積されず、コイルが発熱して断線や発火、イグナイター焼損などの危険性が生じます。

 したがって、イグニッションコイルの設計値以上の通電は意味が無いうえに、コイルやパワートランジスタ(イグナイター)故障(焼損や断線)という結果につながります。

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 以上から、下記のような改善の方法が考えられます。

電圧を上げる・・・
 イグニッションコイルに加える電圧を上げるとコイルに流れる電流が増え、貯まるエネルギーも大きくなります。コイルが磁気飽和になるまでの余裕分は電圧を上げる事によって効果は上がりますが、危険性も増します。また、一定以上の電圧は効果がありません。


電流が流れやすいようにする・・・
 配線を太くする、リレーやヒューズ、コネクター、プラグコードなど電流が流れる上で障害となる物をリファインするなどは、その分の電流量が増えてエネルギー量が増える可能性があります。 ただし理論上であり、車両の現状などで大きく変わるため、体感できる効果は有るかも知れないし、無いかも知れないとしか言えません。ただし、コイルやイグナイターなどの点火系そのものを強化した上での配線のリファインなどは必須となります。 (個人的には無駄を省くという事と車いじりを楽しむと言う観点からも、お勧めしたい方法ではあります)

ドエルタイムを伸ばす・・・
 イグニッションコイルは磁気飽和しないように、電圧に応じてドエルタイムが決められています。 ドエルタイムを伸ばしても電圧を上げたのと同様の効果が得られます。しかし、同様に磁気飽和する手前までとなります。 また点火時期を現在のままでドエルタイムを伸ばすには、通常より早くコイルへの通電を開始しないと点火時期が遅れることとなります。 よってドエルタイムの設定変更には進角の調整も必要で、ECUのデータ変更が必要です。

コイルを変える、イグナイターを変える・・・
高効率なイグナイターやコイルは相応の効果が有ります。


 GigaCoil IG 大型コイルの設定ドエルタイム例

 ドエルタイム  DC8V  7.0mS (絶対最大 7.5mS)
 DC10V 6.0mS (絶対最大 6.5mS)
 DC12V 5.0mS (絶対最大 5.5mS)
 DC14V 4.5mS (絶対最大 5.0mS)
 DC16V 4.0mS (絶対最大 4.5mS)



 まとめ

  1. イグニッションコイルには容量があり、磁気飽和限界以上のエネルギーが必要ならコイルを大型化するしかありません。
  2. 高性能なイグナイターを使用すると、内部抵抗が減少して電流が増え、コイルに貯まるエネルギー量が増加します。またコイルを大型のものに変えることができます。
  3. コイルの電圧を高めるとコイルに貯まるエネルギー量が増加します。ただし、コイルの性能次第で限度があります。
  4. ドエルタイムを伸ばすと、同様にコイルに貯まるエネルギー量が増加します。ただし、コイルの性能次第で限度があります。

 
これらから、
 ・ 最高の性能を狙うならば大型イグナイター+大型コイル。(ただし気筒分のセットが必要)
 ・ 手軽に高性能を狙うならイグナイター内蔵大型コイル
 ・ コイルのマージン分でも出力が欲しい場合、電圧アップや配線のリファイン。
 と言えるでしょう。